研究内容

グラフドローイング

世の中には「もの」と「もの」の「つながり」から構成されるネットワークデータがたくさんあります。例えば、Webサイトのリンク関係、SNSの友達関係、論文の共著関係は大規模なネットワークデータの例です。このようなネットワークデータを扱う情報可視化の一分野をグラフドローイングといいます。ネットワークデータにおいて、「もの」をノード、「つながり」をリンクと呼びます。ネットワークデータを可視化することで、個々のノードがどのようなつながりをしているのか、ネットワークの中で重要なノードはどこか、ノードがどのようなグループ(クラスタ、コミュニティ)を構成しているのかなどの様々な気付きを促進することができます。また、そのような気付きを通じてマーケティングや製品企画、政策形成等における効果的な意思決定を支援します。

データの種類や、どのような可視化・分析をしたいかによって、様々なグラフドローイングの手法が存在します。小山田研究室では、新たなグラフドローイング手法の開発や、ビジュアル分析システムの設計開発、それらを用いた応用研究を行っています。以下では、グラフドローイングに関連した研究を4つ紹介します。

1. 評価グリッド法を用いた認知構造の可視化

評価グリッド法は、半構造化インタビューを用いた定性調査手法で、製品企画等で広く用いられています。評価グリッド法は、インタビューを通じて人々の認知のネットワーク構造を抽出します。評価グリッド法によって抽出された認知構造の可視化は長らく手作業で行われてきました。本研究では、グラフドローイングの一手法である杉山フレームワークを拡張し、認知構造可視化に適したグラフドローイング手法を開発しました[1]。また、それを基盤としてネットワーク分析手法を融合した認知構造のビジュアル分析システムを開発し、評価構造の効果的な分析を実現しました[2]。

2. 線虫胚表現型特徴ネットワークの可視化

生物の発生メカニズムを解き明かすことは、将来のヒトに対する再生医療実現の基礎作り等において重要な課題となっています。本研究では、線虫胚の発生過程で計測した表現型特徴量間の因果関係の分析に取り組んでいます。それらの因果関係は、グラフドローイング手法を用いて可視化することができますが、ノード間のつながりが密であるため、辺の交差が大量に発生し、ノード間のつながりを読み解くことが困難でした。本研究では、可読性の高い可視化図を生成するために、辺が密につながりあった部分グラフを、より簡単な構造のグラフで置き換える辺集中化アルゴリズムを新たに開発しました[3]。また、辺集中化の技術を応用して、表現型特徴とそれに異変を起こす遺伝子のグループの特定などに取り組んでいます。

3. 構造方程式モデリング支援システムの開発

構造方程式モデリング(SEM)は、変数間の因果関係を分析する上で有用な統計解析の一手法として知られています。因果関係を分析する際には、観測変数や潜在変数、パスの追加といったモデルを改善するプロセスが必要になります。本研究では、SEMにおけるモデル改善に必要な情報を統合的に可視化し、分析者が効果的に因果関係の分析ができる環境の構築を目指します。

4. 学術分野の文化の可視化

近年、社会課題の解決に向けて、複数の学術分野が連携した学際融合研究が注目を集めています。学際融合研究を推進するためには、各学術分野の研究者がお互いをよく理解することが重要です。本研究では、研究者の価値観や行動様式を調査したアンケートの結果に基づいて、学術分野ごとの研究に対する向き合い方をネットワーク上に可視化しています。本研究を通じて、学術分野間の相互理解と学際融合の促進を目指します。

研究業績

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俯瞰的可視化

因果関係可視化